博士の愛した数式

博士の愛した数式



小川洋子さん原作の同名小説の映画化。
事故の影響で記憶が80分しかもたなくなってしまった数学博士と、
そこで働く家政婦さん、その息子のお話。


小説を読んでいたので気になり、見に行った。
原作を読んでいるのでどうしても比較はしてしまうが、
世界観は大体再現できていたのではないかと思う。
エピソードがいくつかけずられたりしていたのは仕方ないかな。


全般的に、寺尾さんも深津ちゃんも抑えた演技でよかった。


原作には無かったところして、息子ルートが成長して数学教師になって登場。
小説では家政婦さん目線で話が進むため「息子」という表現が出てくるが、
映画では息子視点になり「母」となってナレーションが進むことになる。


原作では、博士が亡くなるまで、亡くなった後まで語られている。
映画ではそこははっきりとは描かれていない。


一つ残念だったのは、これは亡くなる過程につながるエピソードで
あるために削られたのだと思うが、小説では結構重要と思われるシーンが
削られていた。


★以下、原作のネタバレがありますのでご注意を。★


終盤。
80分しか記憶がもたない博士のために、家政婦さんは買い物も
きっかり80分以内に帰ってくるようにしている。これだと博士に
「お帰り」と言ってもらえるのだ。
ところがある日買い物から帰ってくると、博士は家政婦さんを覚えておらず、
毎朝繰り返す初対面のやりとりをすることになる。


博士の記憶できる時間が短くなっている、ということに、最初に気付くのが
家政婦さんだった。それほど、密な関係を築けていたのだ、ということが
よく分かるシーンで、だから私は、悲しくはあるが気に入っていた。


このエピソードは、ぜひ入れてもらいたかった。